採用の入口を広げる:高校生採用の現状とサロンの実務ポイント
- ユーミン

- 18 時間前
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更新日:11 分前

前回のブログ記事でお伝えした通り、2026年の採用は「美容学生だけを追う」発想だと、どうしても母集団が先細りします。今回は、高校生採用(=高校生との接点づくり)を、現状理解→実務運用まで落とし込んで整理します。
1. 高校の現状 高校生は「普通科」だけではない。進路の幅が広がっている
サロン運営の現場では、高校の仕組みや進路の変化に触れる機会が少ないため、「高校=普通科」「進路=大学か就職」というイメージのままになりやすいかもしれません。しかし実際の高校は、ここ数年で学び方も通い方も大きく多様化しています。 まず、高校には大きく分けて次のようなタイプがあります。

普通科:一般的な高校。幅広い教科を学び、大学進学を目指す生徒も多い
専門学科:商業・工業・農業・福祉など、職業に直結する学科
総合学科:普通科と専門学科の中間のような仕組み。生徒が科目を選びながら将来を考えられる
通信制:通学日数が少なく、レポートやオンライン学習中心で自分のペースで学べる
この中で、美容業界として採用の入口づくりで特に押さえておきたいのが 「総合学科」と「通信制」 です。 ちなみに総合学科を初めて聞いた人も多いでしょう。総合学科は、普通科か専門学科かの二択では対応しきれないほど高校生の進路や興味が多様化してきたため、幅広い科目を生徒が選びながら進路(職業)を考えられる学科として、1994年度(平成6年度)から導入されました。
1)総合学科の増加 総合学科とは何か(普通科とどう違う?) 総合学科を一言でいうと、「高校にいながら、生徒が興味関心に合わせて科目を選び、進路を探れる仕組み」 です。
普通科は授業の枠組みがある程度決まっています。一方で総合学科は選択科目が多く、たとえば
接客・コミュニケーション
情報(PC、デザイン、SNSなど)
生活・福祉
ファッション・メイク など
美容に親和性のある学びを高校段階から選びやすいのが特徴です。
サロン採用にとって総合学科を押さえておきたい理由
総合学科の生徒は、「将来は○○」と最初から決め切っているよりも、
進路を迷っている
大学も視野にあるが、手に職にも興味がある
接客・表現系の仕事に惹かれている
という“揺れている層”が多い傾向があります。
だからこそサロン側が、体験や見学、現場のリアルな話を用意すれば、進路の候補に入りやすい。地方サロンほど、美容学生の母数が少ない分、この層との接点が将来の採用に直結します。
2)通信制高校を選択する生徒の増加 通信制は今や「特別な学校」ではない
通信制というと、「事情がある子が通う場所」という印象を持つ方もいます。ですが今は、あえて通信制を選ぶ生徒が増えています。通信制高校の生徒は年々増加しており、2025年度には初めて30万人を突破し、高校生全体の約10人に1人に達するほど「当たり前の選択肢」になっています。
理由はシンプルで、学び方の自由度が高く、自分のやりたいことと両立しやすいからです。 実際、例えばオリンピックを目指す強化選手のように競技に打ち込みたい生徒や、芸能・ダンス・音楽活動など平日に練習や仕事が入る生徒、また美容・メイク・ネイル、IT・デザイン、動画編集などの専門スキルを高校外で学びたい生徒が、時間を確保するために通信制を選ぶケースもあります。 もちろん、体調面やメンタル面の負担を減らし、自分のペースで学校生活を整えたい生徒、働きながら学びたい生徒など、背景は多様です。

通信制の特徴は、ざっくり言うと次の通りです。
通学頻度が少ない(週1〜数日、または月数回)
オンラインやレポート中心で自分のペースで学べる
アルバイト、習い事、専門学習と両立しやすい
※中には毎日登校している通信制高校もあります。
サロン採用にとって通信制を押さえておきたい理由
通信制の生徒は、時間が組みやすいケースが多く、
平日昼に見学・体験を入れやすい
接点回数を増やせる
「土日イベントだけ」より関係性が作りやすい
というメリットがあります。地方サロンほど、土日だけの集客では限界が出やすいので、通信制の増加は“入口づくりのチャンス”と捉えるのが現実的です。 3)美容師免許が取得可能な高校の増加
多くは「ダブルスクール型」
「高校で美容師免許が取れる」と聞くと、高校だけで完結するように見えるかもしれません。実態として多いのは、高校に通いながら美容専門学校(通信課程)を併修して、国家試験の受験資格を目指す “ダブルスクール型”です。
この層は、早い段階から美容の道に進む意思が固まりやすいため、サロン側が早期に接点を持つと採用の確度が上がります。

2. 高校生を採用する場合 いきなり雇う前に「入口の設計」をする
高校生採用と聞くと、「高校生を雇う」イメージが先に来がちです。ただ、実務としては次の2つに分けて考えると整理しやすくなります。
在学中は“体験・見学・相談”で接点を作り、卒業後の入社につなげる
在学中から雇用(アルバイト等)して、関係性を深める
多くのサロンにとって現実的で強いのは、まず①で入口を作り、必要に応じて②を組み合わせる形です。 2-1. 美容師免許を取得可能な高校生の場合
ここでいう「免許取得可能な高校生」は、ダブルスクール型で学んでいる生徒を想定します。進路が固まっている可能性が高いので、早期接点がダイレクトに採用に効きます。
A)全日制の場合:短時間×高密度の接点が効く
全日制は、授業や部活で忙しく、動ける時間が限られます。だからこそサロン側は「長時間のイベント」より、短い接点を積み重ねる設計が現実的です。
おすすめの型
月1回:60分見学(雰囲気と働き方を理解)
学期ごと:90分体験(ウィッグ/接客体験/先輩トーク)
年2回:個別面談(進路・不安・生活面の確認)
伝えるべき3点
休日と働き方のルール(何時まで/練習の考え方)
成長の道筋(いつ何ができるようになるか)
生活が成立するイメージ(固定給の考え方、手当など)
B)通信制の場合:平日昼の接点を“習慣化”させる
通信制は、平日昼に動けるケースが多く、関係性を作りやすいのが強みです。
おすすめの型
週1回または隔週:90分の職場体験(見学+簡単な実務)
月1回:先輩面談(15〜20分)
2〜3ヶ月に1回:保護者も含めた説明(必要に応じて)
ここでのポイントは、回数を増やせるからこそ「無理なく続く形」にすること。習慣化できると、卒業後の入社が自然な流れになります。
在学中に雇用を絡める場合:業務範囲の線引きが大切
在学中雇用(アルバイト等)を取り入れるなら、最初に「何を任せるか」をはっきり決めた方が安全です。
任せやすい業務例
受付補助、清掃、タオル洗濯、備品補充
SNS用の撮影補助、投稿素材づくり
店内POP・掲示物づくり
ウィッグでの練習(お客様施術ではない形)
雇用を始めると教える現場の手間も増えます。だからこそ、まずは見学・体験で入口を作り、その後に必要なら雇用を検討する順番が無理がないでしょう。

2-2. 一般の高校生の場合:目的は採用ではなく「進路の候補に入ること」
一般高校生は、美容師になりたいと決めているわけではありません。だからこそ大事なのは、いきなり採用の話をするのではなく、「仕事を知る→イメージできる→相談できる→体験する」の流れを作ることです。学校の方針で個別連絡(LINE/DM)が制限される場合も多いため、基本は学校窓口を通す前提で設計します。
① 職業講話(授業に入る)|“入口”を一番広く取れる
学校の授業や進路行事の一コマで、美容師の仕事を短時間で伝えます。ここは採用色を出しすぎず、職業理解として話す方が学校にも通りやすく、参加者も増えます。
話すべき要点(高校生向け)
美容師の仕事は何を提供する仕事か(技術+接客)
1日の流れ(開店準備〜施術〜片付け)
キャリアの広がり(店長、独立、講師、訪問美容など)
「向いている人」の特徴(人と話すのが好き、コツコツ練習できる 等)
※最後に「希望者は見学できます」と案内し、申込は学校経由にするとスムーズです。

② サロン見学会(60分)|“働くイメージ”を持たせる
職業講話で興味を持った生徒に、店を見てもらいます。見学会は「複数名をまとめて案内」でも「個別」でもOKですが、まずは月1回の見学枠を作ると運用が安定します。
60分の中身(例)
10分:挨拶/今日の流れ
15分:店内案内(バックヤード含む)
15分:仕事の説明(最初にやること、1日の流れ)
15分:不安が出る所(休日・教育・給与の考え方)
5分:質問/次の案内(体験会・再見学)
③ 体験会(90分)|“楽しい”と“リアル”を両方渡す
一般高校生は、体験で一気に温度感が上がります。ここも採用より、**「向いているかを確かめる機会」**として設計するのがポイントです。
90分体験のおすすめ構成
ウィッグで簡単な体験(難しさより“できた”を作る)
接客ロールプレイ(受付→案内)
先輩トーク(失敗談+続けられた理由が刺さる)
④ 親子見学(60分)|地方ほど決定率が上がる
一般高校生は、最後に保護者の不安で止まりやすいです。親子枠を用意すると、意思決定が早まります。
保護者が気にする3点
収入はどう上がるのか(給与モデル)
休みは取れるのか(休日・有休・練習の扱い)
将来どうなるのか(キャリアの幅)
⑤ 進路相談(15分)|“次の一歩”を具体化する
最後は短い面談で、本人の状況に合わせて道筋を整理します。(美容専門学校に進学する/ダブルスクールを検討する/まず見学を継続する等)
注意)高校生対応は「学校を通じたやり取り」が基本
高校生(未成年)への見学・体験・採用対応は、学校の方針によって 「学校経由が原則」 となるケースが少なくありません。学校によっては、生徒との個別連絡(LINE/DM/個人SNS)がNG、または 学校の許可が必要 です。その辺りをしっかり確認して対応しましょう。

3. 高校生に説明する4つのポイント
1. 仕事内容(美容師の仕事のリアル)
どんなお客様に、何を提供する仕事か(カット/カラー/パーマ/接客)
1日の流れ(開店準備→施術→片付け→学び)
最初は何から始まるか(受付・掃除・準備・シャンプー練習など)
やりがいと大変さ(立ち仕事・土日中心・継続練習が必要 など)
2. お金の話(給与モデル)
固定給の考え方(最初の目安)
手当(交通費、皆勤、店販、モデル代など)
どうしたら給与が上がるか(ステップの見える化)
3. 休みと働き方(休日・練習の扱い)
休日数/連休/有休
出勤・退勤の目安
練習は「いつ」「どれくらい」「勤務時間内か外か」
4. 成長の道筋(教育ロードマップ)
半年〜2年で何ができるようになるか
デビューまでの目安とチェック項目
教える体制(誰が/頻度/面談やフォロー)
4. 高校生採用の基本ルール

1) 基本は「学校・ハローワーク経由」で進む
高卒求人は原則、ハローワークに求人申込み → 高校(進路指導)経由で応募・推薦という流れで進みます。
企業が 生徒の家庭を直接訪問する等の接触は不可 と明記されている資料もあります。
2) 求人票まわりの実務(6月〜7月が重要)
求人申込み受付:6月1日から(土日祝の場合は翌開庁日)
受理印つき求人票の返戻:7月1日以降(地域資料で明記)
高校訪問(具体的な求人の話を伴う活動)は、求人票返戻後(7/1以降)とする運用が示されている例があります。
3) 全国共通の「選考解禁スケジュール」を守る
厚労省が示す高卒採用の全国スケジュール(例:令和8年3月卒向け)は以下です。
応募書類の提出開始:9月5日(沖縄は8月30日)
選考開始・内定開始:9月16日
→ これ以前の“実質的な選考”(面接・内定確約など)はNGになりやすいので注意。
4) 応募前職場見学は「歓迎」だが、選考にしない
7/1以降、応募前職場見学の受入を推奨している労働局資料があります。
ただし同資料で、職場見学は採用選考の場ではない/早期選考につながる行為は慎む旨が明記されています。
5) 「一人一社」など応募・推薦ルールは“都道府県運用”
高卒は、一定期間 「1人1社まで」の応募・推薦制限がある地域が多く、例えば東京労働局資料では推薦開始日〜:1人1社/10月1日以降:1人2社まで と明記されています(年度・地域で変動)。→ ここは地域差が大きいので、必ず自地域の労働局/ハローワーク資料で確認。
6) 未成年が混ざる前提で「労務ルール」も安全側に
選考時点で18歳未満の生徒もいるため、在学中の受入や雇用を絡める場合は特に注意。
18歳未満の深夜業(22時〜5時)は原則禁止など、年少者保護規定があります。
5 高校訪問のポイント

1) 目的は「採用」より先に“職業理解の機会提供”で入る
最初から求人の話を押すより、職業講話・見学・体験の受け入れを提案すると通りやすい。
2) 窓口は基本「進路指導/キャリア担当」
まずは電話で「ご担当者様」を確認してアポを取る。
担任ではなく、進路指導(就職・進学)担当が話が早い。
3) 持参はA4 1枚に絞る(先生が回しやすい)
内容はこれだけでOK
何を提供するか(講話/見学60分/体験90分)
対象学年(1〜3年)
所要時間・定員・実施可能日
申込方法(学校経由が基本)
安全配慮(引率・保護者同伴可・緊急連絡)
4) 学校ルールを先に確認する(ここが一番大事)
個別連絡(LINE/DM)はOKか/学校経由が必須か
保護者同意の要否、写真撮影の可否、当日の引率の有無
この確認で“信頼”が取れる。
5) 先生が求めるのは「安心」と「手間が少ない運用」
60〜90分で完結、準備が少ない、学校の負担が少ない。
当日の流れ(台本)があると安心される。
6) 次の一手をその場で決める
「まずは職業講話1回」か「見学会1回」など、最小の一歩で日程候補を2〜3出して終える。
7) 訪問後は“お礼+1枚”でフォロー
お礼メール+A4案内を再送し、連絡窓口を明記。
反応がなくても、1〜2か月後に軽く再連絡で十分。
まとめ:高校生採用は「今すぐ雇う」ではなく、“未来の採用をつくる”取り組み

高校生採用は、いきなり雇用から始める必要はありません。まずは 見学・体験・相談 の入口を用意して、「美容の仕事を身近に感じてもらう」ことからで十分です。
高校の学び方や進路が多様化している今だからこそ、サロン側が少しだけ動くだけで、これまで届かなかった層と自然に接点が生まれます。特に地方では、その接点が数年後の採用を安定させる“土台”になります。
高校生採用は、短期で結果を求めるものではありません。しかし、早く始めたサロンほど、「毎年の採用がゼロにならない仕組み」 が積み上がっていきます。まずは“入口を作るところ”から始めてみてください。
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