2026年、美容業界の新卒採用はどう変わる?これからは"入口づくり"がカギに
- ユーミン

- 3 日前
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更新日:2 日前
2026年の新卒採用市場を一言で表すなら、「採りたいのに採れない」状態がさらに深刻化する年です。ただし全員が同じように苦戦するわけではなく、人気サロン・都市部・高待遇はさらに強く、一方で中小サロンや地方は採用難が深刻化する・・そんな"二極化"が進みます。
その背景には、(1)若年人口の減少、(2)高い離職率、(3)賃上げ圧力(最低賃金の上昇)という、採用を困難にする条件が重なっていることがあります。

◾️まず押さえる:2026年の採用環境を決める「3つの前提」
1)そもそも若い人が減っている
総務省の推計によると、2026年1月1日時点の"新成人(18歳)は109万人と報じられています。これは昨年と同じ水準ですが、新成人人口は長期的には減少傾向が続いているとされており、母集団が大きく増える見通しは立ちにくい状況です。 そして母集団が増えない以上、新卒採用は構造的に厳しくなります。
さらに、いわゆる「大学の2026年問題」として、文部科学省の将来推計では大学進学者数は2026年以降、18歳人口の減少に伴って減少局面に入るとされています。
つまり今後は、若年層の総数が増えない中で、大学・専門学校・就職を含めた進路全体で人材獲得競争が強まる予想になります。その影響は美容業界にも及び、美容系の専門学生(=新卒採用ターゲット)も“取り合い”が起きやすくなるため、従来の「美容学生だけにアプローチする採用」では不安定になりやすい状況です。
2)美容は"入っても辞めやすい"が、改善途上
厚労省資料では、理美容を含む領域で1年以内退職19.7%/3年以内退職40.9%という数字が示されています(把握できた卒業者ベース)。さらに同資料内で、離職理由として「給与不満」が上位に来ていることも示されています。つまり2026年も、採用=入口づくりだけでなく、定着まで設計できるかが勝負になります。
3)賃上げ圧力が強い(最低賃金・初任給の上昇)
最低賃金は上昇ペースが速く、2025年度には全国加重平均が1,121円まで上がった(前年度から66円の大幅増(過去最大))という分析も出ています。また一般の新卒市場でも、2026年卒では初任給を引き上げた企業が約9割(88.8%)という調査結果があり、若年層の賃金期待値が上がっています。美容業界もこの流れから逃げにくく、"給料の説明力"が弱いサロンほど不利になりやすい状況です。
◾️2026年の予測:美容業界の新卒求人で起きる「6つの変化」
予測1:新卒は引き続き"超売り手"だが、職場選びはシビアになる
厚労省データでは「生活衛生サービス職業従事者」の有効求人倍率が全体よりかなり高い水準(例:3.22倍)と示されています。一方で学生側は、条件が悪いと「入らない・続けない」選択もしやすい状況です。"採用できるサロン"と"採用できないサロン"の差が一層開く年になるでしょう。
予測2:採用競争は「初任給」よりも"生活の安心設計"へ
もちろん初任給アップは武器ですが、2026年はそれ以上に
固定給の安心感
住宅・引越し・通勤の支援
休日数・拘束時間の透明性
教育期間とデビュー設計
が有効になります。離職理由に「給与」「拘束時間」が出ている以上、ここを"説得力のある言語化ができるか"が重要です。

予測3:採用は「SNS×リアル体験」のセットが標準装備になる
一般就活では"オープン・カンパニー"や仕事体験が拡大し、学生の行動量も増えています。美容も同じで、2026年はSNSで興味→サロン見学・体験→面談で決定という導線を作れているサロンが強いです。作れていないサロンはしっかり整備しましょう。
予測4:「美容師免許は取るが、美容師にならない」層への対策が採用テーマになる
ホットペッパービューティーアカデミー系の発信では、有資格でも"美容師として働いた経験がない"割合が増えているという指摘があります。つまり2026年は新卒だけでなく、"未就業の有資格者"の掘り起こし(時短・週3勤務・復帰支援など)も採用戦略に入ってきます。
予測5:経営環境の悪化で「採用に投資できないサロン」が増える
帝国データバンクは、2025年1〜8月の美容室倒産が157件で前年同期を上回ったとしています(コスト高・人手不足など)。2026年はこの影響で、採用費をかけられない→さらに人が減るという負の循環に入るサロンも出やすくなります。逆に言うと、採用と定着に先行投資できたサロンが安定的に成長しやすいでしょう。
予測6:美容学生だけをターゲットにする採用では限界が来る(特に地方サロン)
2026年以降、「美容学生(=新卒)だけを狙う採用」は、特に地方サロンほど限界が見えています。理由はシンプルで、母集団そのものが増えにくい一方で、学生側は都市部・有名店・高待遇へ流れやすく、地方はどうしても比較の土俵で不利になりやすいからです。
だからこそ2026年の採用は、ターゲットを美容学生"だけ"に固定しないことが重要です。
具体的には、(1)中高生など将来の候補層に早めに接点をつくる、(2)美容師免許はあるが現場経験が少ない層(未就業・ブランク)を受け入れる、(3)Uターン希望者や地域志向の若手に向けて「暮らしの魅力」まで含めて訴求する・・といった形で、入口を複線化する必要があります。
地方サロンほど、採用は「募集を出す作業」ではなく、地域で"選ばれる理由"を育てる活動になります。新卒の取り合いだけで勝負するのではなく、将来の候補者を増やし、戻って来やすい仕組みをつくり、採用の土台を広げていく。 これが、2026年以降の地方採用で効く現実的な方向性です。

◾️なぜ「美容学生だけを採る採用」が通用しなくなったのか
私たちビューティープロでは2019年に『美容師になろう!』中高生版を発行しました。当時から私たちは、「美容学生だけを対象にした求人活動だけでは、いずれ限界が来る」と感じていました。
美容業界全体として将来のなり手を増やしていくためにも、そして美容学生の人数が少ない地方サロンの採用を安定させるためにも、中高生の段階から美容の仕事に触れてもらう機会をつくることが必要だと考えたからです。
この中高生版発行をきっかけに、ビューティープロでは中高生へも視野を広げていきました。実際、美容学生だけの採用活動に限界を感じ、高校生へ目を向けるサロンも増えてきました。そして2025年には、専門学生と高校生の採用を行うサロン交流会「採用と育成の未来会議」を始めました。2026年では、美容学生だけをターゲットにする採用はますます厳しくなると感じています。
なぜそうなのか? 多くのサロンが見落としている、採用市場の構造変化についてお話しします。
変化①進路の意思決定が年々早期化している
リクルート進学総研の調査によれば、高校2年生の秋(9月)時点で「第1志望の会社が決まっている」生徒が過半数を超えています。
この状況を美容業界に照らし合わせてみると、美容学校に入学してから初めて接点を作っても、「もう就職先の候補は決まっている」ケースが増えているということです。 会うタイミングが遅ければ、どんなに良い条件を提示しても厳しいです。
変化②キャリア教育は"早期化"が前提になっている
文部科学省の方針でも、キャリア教育は小学校段階から発達段階に応じて系統的に行うことが推奨されています。採用側から見れば、これは大きなチャンスです。学校側も「早期から職業観に触れさせたい」と考えているため、サロンが教育現場に入りやすい土壌が整っているのです。
変化③早期離職が重い業界ほど、入口の前倒しが必須
先にお話ししたように、3年以内の離職率が4割という現実を考えれば、入口が細いままでは経営が立ち行きません。
2026年以降は、採用の入口を中学生→高校生→美容学生→内定→定着という「パイプライン」で設計することが重要です。そうすることで、長期的に採用を成功させることが可能になるでしょう。
◾️2026年型採用戦略:「3層ファネル」(※)で考える
従来の「美容学生への求人」だけでなく、もっと手前から関係を作る。これが新しい採用の基本設計です。 ※「ファネル(funnel)」は日本語だと「じょうご」のことです。マーケティングや採用の文脈では、
たくさんの人が入口にいて、段階が進むほど人数が絞られていく流れ(=じょうごの形)を表す言葉として使います。

【層①】中学生:職業観・憧れを作る層
目的:応募ではなく、"将来の選択肢に入れてもらう"こと
具体的な施策例
中学校での職業講話(30〜45分) 「美容師のリアル」「やりがい」「向いている人」「職業としての魅力」を伝える
体験ミニワーク ウィッグでカットの一部を体験、カラー手順のデモンストレーションなど
保護者向けメッセージを必ず入れる 美容師は親が反対しやすい職業。「資格」「働き方」「キャリアパス(店長・独立・講師)」を整理して伝えることで、親の理解を得やすくします
【層②】高校生:進路決定に影響する"具体情報"を渡す層
ここが最も重要です。高校生は進路の意思決定が始まっているため、ここで具体的な情報を届けられるかが勝負の分かれ目になります。
目的:"見学・体験につなぐ"こと
具体的な施策例
進路指導室に置ける「1枚資料」を用意 休日・給与モデル・教育ロードマップ(半年〜2年) 美容学校→就職後のキャリアが一目で分かる内容
高校生向けサロン体験(例:2時間プログラム) 受付→施術補助→先輩トーク→質問タイム(最後にLINE導線※学校の許可)
親子向け見学枠(月1回開催) 親の納得が内定承諾率を大きく左右します
【層③】美容学生:最終ジャッジ層
従来通りのアプローチ層ですが、勝負は「条件」よりも安心の言語化です。
最低限、明文化すべき項目
固定給の最低保証/各種手当/ウイッグ代/店販の扱いetc
休日・練習・残業のルール
デビューまでの道筋(いつ何ができるようになるか)
入社後90日間のオンボーディング(定着設計)
※このやり方が「地方サロン」で特に効く理由
美容学生の母数が少ない地域ほど、3層ファネルは強烈に効きます。理由は4つです。
1)そもそも候補者プールが薄いので、"取り合い"を避けられる
地方は美容学校の在校生数が少なく、同じ母集団をサロン同士で奪い合いがちです。中高生段階で接点を作れば、競争が激化する前に「第一想起」(最初に思い浮かべるブランドの事)を取れます。
2)地元志向に刺さる(通勤・生活・親の安心)
地方には「地元で働きたい」「生活費を抑えたい」「親の近くが安心」という層がいます。中高生の段階で"地元で働くリアル"を示せると、都市部流出を減らす一手になります。
3)学校・地域との距離が近く、面で広がりやすい
都市部よりも、先生・PTA・地域企業の距離が近いケースが多く、職業講話や体験受け入れの話が通りやすい。1校と関係ができると翌年以降も継続しやすく、採用が"資産化"します。
4)「地元に残る理由」を先に作れる
中高生はまだ情報の比較軸が固まりきっていません。だからこそ、地元で活躍している先輩や働き方を見せることで、進路の前提を作れます。
<未来の採用成功事例>
①美容学生が少ない地域で「高校生体験会」を仕組みにして、採用が安定したサロン
エリア:人口10万人程度の地方都市 規模:1店舗(スタッフ7名)
課題
・美容学校の学生数が少なく、求人を出しても応募が来ない
・来ても都市部志向が強く、見学後に辞退が多い
やったこと(3層ファネルの"高校生層"から整備)
高校の進路指導室に置けるA4 1枚資料を作成
・給与モデル(昇給についても)
・休日数、連休、有休
・1年目〜2年目の教育ロードマップ(いつ何ができるか)
高校生向け2時間体験会を年2回開催(各回5〜8名)
・「見学」だけで終わらせず、先輩トーク+質問タイムまでセット
体験後の導線をLINE一本化
・当日中にお礼+次の見学案内
・返信テンプレで"即レス体制"を作る
結果(例)
体験会からの見学予約が毎回2〜4件発生
美容学校入学後に再接点ができ、1年目の冬〜2年目に内定へ
内定辞退が減り、「毎年1名は採れる」状態が見え始めた
成功のポイント
"技術の上手さ"ではなく生活の安心(休日・給与・教育)を先に伝えた
学校側に「このサロンは生徒を安心して送り出せる」と思ってもらえた
LINEで接触回数を増やし、熱量が下がる前に次の行動を取れた
注意)高校生の場合、SNSでの直接のやり取りについて学校に相談してください
②中学生の職業講話から始めて「地元就職の前提」を作り、採用が途切れなくなったサロン
エリア:過疎化が進む地域(都市部まで電車で1時間以上)
規模:2店舗(スタッフ12名)
課題
地元に残る若者が少なく、採用が毎年"運任せ"
新卒が入っても、1〜2年で都市部へ転職してしまう
やったこと(3層ファネルを"中学生→高校生→美容学生"で連動)
中学校の職業講話に毎年登壇(1校から開始→翌年2校へ)
・「美容師の仕事」だけでなく
・地元で生活できる働き方」「将来のキャリア(店長/独立/講師)」まで話した
高校生には親子見学枠を月1で用意
・親の不安(収入・休み・将来性)に答える時間を最初から組み込んだ
美容学生には入社後90日プログラムを明文化して提示
・教育担当、チェック項目、月1面談、相談窓口
・「入社後の不安」を事前に潰す資料を作った
結果(例)
"地元でも美容師としてやっていける"という認識が広がり、見学の質が上がった
親の反対で離脱するケースが減り、承諾率が安定
入社後のギャップ離職が減り、2年目の戦力化が進んだ
成功のポイント
早い段階で「地元で働く理由」を作った(都市部と比較される前に接点を取る)
"採用"ではなく"進路支援"として学校と関係を築いた
定着設計まで含めて提示し、安心感を作れた
注意:入口を広げるほど「中身」が問われる
ここは厳しめに言います。中高生にアプローチするほど、サロン側の"説明の甘さ"が致命傷になります。
最低限、以下が曖昧なままだと信用を失い逆効果です。
固定給・手当・ウイッグ代など、お金の説明がふわっとしている
休日・拘束・練習のルールが人によって違う
見学対応が遅い/フォローが雑
教育が属人化していて「成長の道筋」が見えない
入口を増やすなら、安心の言語化(募集要項・見学案内・教育ロードマップ)をセットで整えるのが必須です。
◾️最後に:2026年以降の採用は「地域の進路インフラ作り」
若年人口は増えず、離職率は高止まりし、賃上げ圧力は強まる。この三重苦の中で、美容学生だけを追う採用から、高校生・中学生まで含めた"入口づくり"にシフトしたサロンが安定的に成長できます。
もはや「新卒=新卒募集」ではありません。「採用=地域で育てる仕組み」です。いわば地域の進路インフラを自らつくる活動なのです。
特に地方サロンは、中学生→高校生→美容学生の3層で入口を前倒しし、地域で候補者を育てる仕組みを作ったところから採用が安定します。
2026年、あなたのサロンの採用戦略をアップデートする。その第一歩を始めてみませんか?
次回は高校生採用について、現在の高校の現状、採用活動の実務について紹介します。
参考資料
総務省統計局「人口推計」https://www.stat.go.jp/data/jinsui/topics/pdf/topics147.pdf?utm_source=chatgpt.com
https://www.stat.go.jp/data/jinsui/topics/topi1472.html?utm_source=chatgpt.com
厚生労働省「理容業・美容業に関する関連データ」https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/001362852.pdf
厚生労働省「令和7年度 地域別最低賃金」https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001571192.pdf
帝国データバンク「美容室の倒産動向」https://www.tdb.co.jp/report/industry/20250904-salon25y1-8/?utm_source=chatgpt.com
リクルート進学総研「高校生の進路選択行動影響調査」https://souken.shingakunet.com/research/2022/12/post-2.html?utm_source=chatgpt.com
文部科学省「普通科におけるキャリア教育の必要性」https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/023/toushin/06122007/002.htm?utm_source=chatgpt.com
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