美容師はAIにはできない「喜びを与える仕事」その価値を広げていきたい
- ユーミン
- 3月8日
- 読了時間: 4分

鴨田 公弘 Kamoda Kimihiro
三重県立あけぼの学園高等学校教師(美容科担当)
美容師 ・会社経営者
1968年生まれ、愛媛県出身。東京の大学卒業後、日本アイビーエム
に入社し営業職で活躍。しかし「美容師になりたい」という夢を追い
退職し、美容師へ転向。店長、オーナーを経て、教育への関心から教
員免許を取得し教師になる。特別支援免許や心理カウンセラー資格
も取得。その後高校で美容を教え、日本初の高校生美容室を開設。
現在、AI時代を生きるためのバイアビリティ教育を提唱。学校教育
改革や美容業界の発展に尽力中。 三重県立あけぼの学園高等学校
〒519-1424 三重県伊賀市川東412 TEL 0595-45-3050

IT企業から美容業界、
そして教育へ
未熟児で生まれたせいか、子供の頃から薄毛が悩みでした。高校時代は坊主で野球に没頭したため、その悩みから一旦遠ざかりましたが、大学へ入学し坊主から脱却。おしゃれを楽しみたいと思っても、薄毛がネックでした。数々の美容室を回り理想の髪型を求めましたが、悩みを解決してくれる美容師
には出会えませんでした。
そんな中、たまたま懸賞で応募したIBMのパソコンが当たり、企業研究を通じてIBMで働きたいという強い思いが芽生え、厳しい採用試験に合格し、日本IBMに入社しました。入社後は厳しい研修を経て営業部に配属され、国内外で活躍しました。
しかし、心は美容業界に傾き始め美容師になる事を決意。26歳の時、日本IBMを退社して美容学校へ入学しました。卒業後勤務したサロンでは1ヶ月でスタイリストデビューし、店長に昇格。経営難のサロンを立て直しました。さらに教育への志も深め、36歳で中高教員免許を取得しました。
教育×美容で未来を創る
その後は公立中学で社会科の講師として教壇に立ち、バスケ部の顧問も務め1年で地区優勝へ導きました。そしてこの頃、「美容師になりたい高校生」を最短でスタイリストにさせてあげたい、教員としてサポートしたいという気持ちになりました。
その後、ご縁あってその思いは実現しました。三重県立あけぼの学園高等学校で美容科を創設し、その運営を任されています。日本初の高校生美容室を立ち上げ、全国技術大会での優勝も果たしています。またビューティクリエイト部を設立し、数々の商品を企画・販売しています。
さらに2024年からは訪問美容をスタート。過疎が進み美容室がない地域のお年寄りを月に1回訪問しています。それら一連の活動が地方創生に貢献していると、地元の伊賀市はじめ多方面から表彰していただきました。今後も教育の充実に尽力し、美容業界の未来を切り拓いていく決意を新たにしています。
ポイントは
「AIが苦手なこと」
美容と教育に関わる中で、子供達が生きる上で大切な価値観を提唱しています。私たち人類は求められる価値を提供し合いながら、これまで集団生活を営み繁栄して来ました。求められる価値はシンプルに「喜び」が鍵となります。喜びとは「嬉しい」「楽しい」「快い」といった感情でこれを嫌う人はいない
でしょう。
そして人は喜びに対し対価を支払います。またこれらはAIが最も苦手とする分野です。AIにより効率化を求めていく一方で人が人に喜んでもらう機会が薄れつつあります。つまり本来の「喜び」の本質が見失われています。
だからこそ、私たちはすべての行動の基準を「人に喜んでもらうこと」にフォーカスする必要があります。
「人を喜ばせる」ことが未来を創る
美容師の仕事は「人を喜ばせる」仕事です。私の授業では例えば「髪が太い」「くせ毛」など髪のお悩みに対して「どうしたら喜ばせる事ができるのか」を生徒たちに考えてもらいます。
これからの時代、AIが進化し、仕事の在り方が変わっても、「人を喜ばせること」の価値は決して失われません。むしろ、それこそが人間にしかできない本質的な役割であり、私たちが社会で生きていく上での大きな強みとなります。
美容師という仕事は、まさにその象徴です。お客様の悩みに寄り添い、解決策を考え、喜びを提供する、この姿勢こそが、人間らしい仕事の本質ではないでしょうか。「どうしたら喜んでもらえるか」を考えることは、自己成長にもつながり、やりがいのある充実した人生を築く鍵となります。この「人を喜ばせること」を基軸にした価値観教育を「バイアビリティ教育」(※)と名付け、学校教育への普及活動を行っています。
これからの未来を生きる私たちにとって、「人を喜ばせる」ことを大切にする姿勢こそが、仕事や人生を豊かにし、より良い社会を築いていく原動力になるのです。
(※)バイアビリティ=viability は「うまくいく可能性、生存能力」といった意味になります


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